[日商簿記1級]線形計画法

2018年6月22日

ラク
ラク
簿記の意思決定会計でセンケイケイカクホウってのが出てきたんだが、よくわかんねぇ
カズ
カズ
大学の数学で習った気もする・・・

経理で用いられる数学の考え方の一つに、線形計画法(リニアー・プログラミング)があります。

名前だけ見ると少々難しそうですが、実態はそうでもありません。具体的な流れを見ていきましょう。

線形計画法

線形計画法は主に、製品が2種類(仮にAとBとする)あり、それを作成するための「機械の稼働時間」や、「作業時間」など、二つ以上の条件下でどのくらいの割合で生産すれば一番利益を上げられるかを、1次式を用いて考える方法です。

ここで線形計画法を用いるには、三つの要素である目的関数・制約条件・非負条件を考える必要があります。

目的関数

目的関数は、最大にするべき利益を求めるための関数です。

例えば、製品Aを1個売り上げたときの利益が240円、製品Bの利益が200円、合計の利益をZとするなら、以下のようになります。

目的関数
\[Z = 240A + 200B\]

制約条件

制約条件は、各製品を作るための環境や制約などの条件を不等式で示したものです。

製品Aを一つ作るのに、機械稼働時間が4時間、Bの場合2時間かかるとして、合計で機械稼働時間が年間2,000時間までしか動かせない場合、以下のようになります。

制約条件
\[4A + 2B \leq 2000\]
また、製品Aを組み立てるのにかかる作業時間が1個あたり2時間、Bが4時間、合計で1600時間しか許されない場合は以下のようになります。
制約条件
\[2A + 4B \leq 1600\]
さらに、それぞれの製品に需要量があり「それ以上は作っても売れないだろう」、もしくは、作り手側の都合で「それ以上は作れないだろう」と予測されることがあります。

個数上の制約がある場合、その条件も組み込んでやる必要があります。例えばAが440個、Bが360個までしか需要がない場合、以下の式を加えます。

制約条件
\[A \leq 440\] \[B \leq 360\]

非負条件

非負条件とは、製品を生産する個数がマイナスにならないということです。

そもそも、今年度の製品の生産は-1個だったとか言われても意味がわからず、あり得ない話です。不等式にあらわすと以下のとおりになります。

非負条件
\[A \geq 0\]

\[B \geq 0\]

あらためて、これらの数値をそのまま使った資料を用いて、問題を見てみましょう。

問題

ある会社では、2種類の製品A、Bを、材料は機械で加工し、その後人力で組立作業をして製造・販売しています。今年度の資料は以下のとおりで、この条件に基づいて次年度以降、それぞれいくつずつ製品を作ればよいかそれぞれの個数を求め、そのときの年間の利益も求めなさい。

製品A 製品B
1個あたりの利益 240円 200円
1個あたりの機械時間 4時間 2時間
1個あたりの組立時間 2時間 4時間
最大需要量 440個 360個

なお、年間の機械稼動時間は2000時間、年間の組立作業時間は1600時間とします。

解説

線形計画法を用いて考える場合は、まずそれぞれの式をグラフに落とし込み、そこから範囲を絞っていくことが重要になります。

キュー
キュー
試験の場合グラフはフリーハンドで書かなあかんから、慣れておこう!

目的関数は最終的な利益を求めるための式のため、グラフ上には表さず、それぞれの条件をグラフに書き込んでいきます。

横軸をA、縦軸をBとし、先ほどの条件の

\(4A + 2B \leq 2000\)・・・(1)

\(2A + 4B \leq 1600\)・・・(2)

\(A \leq 440\)・・・(3)

\(B \leq 360\)・・・(4)

\(A \geq 0\)・・・(5)

\(B \geq 0\)・・・(6)

をそれぞれグラフに書き込んでみましょう。グラフに書き込む際に、分かりやすいよう不等式を等式として書き込んでいます。また、(5)(6)については正の範囲を見ればよいだけなので割愛します。

次に共通の範囲内のそれぞれの交点に着目します。

共通の範囲とは下図のように橙色に示した範囲を言い、すべての式の条件に当てはまる範囲を表しています。

ちなみにこの図のように、凹んでいない部分の集合を凸集合と呼び、その端の点を端点といいます。

要するに共通の範囲内のそれぞれの交点が端点です。

原点\((0,0)\)から遠ざかれば遠ざかるほど、製品A、Bの販売量は増えていき、利益も増えていきます。

したがって、利益が最大になるのは、この範囲内の端点のいずれかということになります。

では、それぞれの端点の座標を求めてみましょう。ここでも、それぞれの不等式を等式と見て扱います

ア:(4)式\(B = 360\)とB軸上の交点

イ:(2)式\(2A + 4B = 1600\)と(4)式\(B = 360\)の交点

ウ:(1)式\(4A + 2B = 2000\)と(2)式\(2A + 4B = 1600\)の交点

エ:(1)式\(4A + 2B = 2000\)と(3)式\(A = 440\)の交点

オ:(3)式\(A = 440\)とA軸上の交点

となります。アとオに関してはそれぞれの軸上なのでアは\((0,360)\)、オは\((440,0)\)となります。

イとエに関してはそれぞれイの(2)式に\(B = 360\)を、エの(1)式に\(A = 440\)を代入すればよく、その座標はイは\((80,360)\)、エは\((440,120)\)となります。

ウの交点は少しめんどくさいですが、以下の連立方程式を解くことで交点が求まります。

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 4A + 2B = 2000 \\ 2A + 4B = 1600 \end{array} \right. \end{eqnarray}

これを解くとウは(400,200)となります。

表にまとめると以下のようになります。

A B
0個 360個
80個 360個
400個 200個
440個 120個
440個 0個

あとはそれぞれの製造した個数(=売り上げ個数)にAは1個あたり利益240円、Bは利益200円なので、それぞれの個数を掛けて、最後にAとBの利益の合計を求めれば答えが得られます。

この先は利益を求めるために一つ一つ計算して当てはめなければなりませんが、イはアよりも、エはオよりも売り上げる個数が多いことは表を見れば明らかなため、検証するのはイ、ウ、エのみで問題ありません。

イ:\(240 \times 80 + 200 \times 360 = 91200\)より、92,000円

ウ:\(240 \times 400 + 200 \times 200 = 136000\)より、136,000円

エ:\(240 \times 440 + 200 \times 120 = 129600\)より、129,600円

これより、ウが一番利益が高くなるため、Aを400個、Bを200個売ったときが最大の利益になることが分かります。

解答

A:400個、B:200個、利益:136,000円

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線形計画法・まとめ

カズ
カズ
とにかくグラフを書いて落とし込むことが大事だね!
ラク
ラク
グラフの交点が分かればある程度絞り込めるな!

線形計画法と聞くと難しく身構えてしまいがちですが、やっていることは1次式のグラフの交点を求め、それぞれの場合を試しているだけに過ぎません。

また、条件が二つの場合は大抵軸と平行線と交わる端点ではなく、連立方程式を解いた場合が最適解になることが多いです。

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